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中学生向け |短歌の作り方のコツと例【部活、春夏秋冬、恋など】

・「短歌を作る課題が出されたけど、何から始めれば…」

・「何をどう詠めばいいのか、わからない。」

・「センスも才能もないから短歌なんて無理。」

国語で短歌を作る課題が出され、このような悩みに直面したことはありませんか?

この記事では、もと中学校の国語教員の経験をもつ私が、短歌の作り方を紹介します。

中学校で短歌を作る課題が出されるのには理由があります。
短歌を通して、日本の伝統的な言語表現に興味をもってもらい、その表現を体感してもらいたいのです。

短歌の5・7・5・7・7の歌の形は、『万葉集』が作られた奈良時代から日本に存在し、5音・7音のリズムは現代にも息づいています。

短歌を作るのにセンスや才能は必要ありません。
しかし、素敵な短歌には、ちょっとした表現のコツがあります。

ここでは、短歌が作れないと悩む中学生に、以下のポイントを解説します。

・短歌の作り方のポイント
・短歌の作り方のコツ
・短歌の作り方の例
・部活、春夏秋冬、恋などを詠んだ中学生の短歌

15分くらいで読める記事ですが、書いてあることを実践すれば、身近な題材で短歌を作れるようになります。

勉強や部活などの学校生活にまつわること、春夏秋冬の季節の移り変わり、恋をして自分の心が大きく揺れ動いた様子などを短歌にしてみましょう。

それではさっそくいきましょう。

短歌の作り方のポイント

短歌を作るときのポイントは2つあります。

「5・7・5・7・7のリズムを守ること」「読み手(自分と同じ経験をしていない人)を意識すること」です。

5・7・5・7・7のリズム(=形式)を守り、自分と同じ経験をしていない読み手に自分の感じたことが伝わるような表現(=内容)にすることで、形式と内容の両方がそろった短歌になるからです。

短歌は5・7・5・7・7の31音の決まった型がある定型詩です。

その音数を守って作ることで、一首の歌として形が定まります。
そして、読み手あっての表現なので、自分と同じ経験をしていない人が読んで理解できる歌がいい歌になります。

短歌の作り方のコツ

印象的な短歌を作るにはコツがあります。いくつか紹介します。

感情を表す言葉に頼らない

感情を表す言葉には「うれしい」「楽しい」「美しい」などの程度や状態を表す形容詞がありますが、これらの言葉は何がどのくらいそうであるのかが伝わりにくいです。

ものや出来事など、目に見えることを表現し、感情は読み手に想像してもらいましょう。

(例)
・なにもかも 決めかねている 日々ののち ぱしゅっとあける 三ツ矢サイダー
(野口あや子「くびすじの欠片」より)

話し言葉を使う

話し言葉を使うと、情景がよりリアルに伝わります。

会話や自分の心の声を、普段の話し言葉で切り取り、歌に入れてみましょう。
「 」は特に強調したいときだけ使います。

(例)
・「寒いね」と 話しかければ 「寒いね」と 答える人の いるあたたかさ
(俵万智『サラダ記念日』より)

・キライでも 好きでもどうせ 泣いちゃうし やっぱ恋って くだらないかも
(加藤千恵「今日は何の日?」より)

オノマトペ(擬音語・擬態語)を使う

 聞こえる音や目に見える様子を、聞こえる通り、感じる通りに言葉にして、短歌に使ってみましょう。

だれも使ったことのない言葉でもかまいません。
その方がかえって新鮮に響く場合もあります。

(例)

(ふくろう)は いまか眼玉(めだま)を 開くらむ ごろすけほうほう ごろすけほうほう
(北原白秋『霧の花』より)

向日葵(ひまわり)は 金の油を 身にあびて ゆらりと高し 日のちひささよ
(前田夕暮『生くる日に』より)

短歌の作り方の例【部活を題材に】

ここでは、何をどう詠むか、短歌を作る4つの手順を紹介します。

①題材を言葉で表現する 五感を使う

まず「何を」詠むかですが、部活、春夏秋冬、恋など自分が経験したことで具体的な情景が浮かぶものを選びます。

五感をフル回転させて、目にうつること(視覚)、聞こえてくる音(聴覚)、におい(嗅覚)、感じた味(味覚)、触った感触(触覚)など、感じたことを言葉にします。

浮かんだ言葉は、単語でも、短い文章でもすべて書き留めます。

(例)題材:(部活)3年の引退試合

浮かんだ言葉:
最後の試合、緊張した、後輩の応援が聞こえた、応援は声援ではなく拍手、負けて悔しい、くやし涙、しょっぱい、涙が濡れて光る、マスクで表情は見えない、相手の気迫がすごかった、熱気が伝わる、など

②5音・7音の言葉にする

次に「どう」詠むかですが、書き出した言葉を5音・7音の言葉にしていきます。

音数の数え方には注意が必要な語もあります。
たとえば「チュ・ー・リ・ッ・プ」は5音と数えるように、音を長く伸ばす「ー」(長音)、小さい「っ」(促音)は一音と数え、小さい「ゃゅょ」(拗音)、「ふぁ」など小さい「ぁぃぅぇぉ」は前の字と合わせて一音になります。

伝えたいことがうまく5音・7音におさまらなかった場合は、言葉を言い換えたりするなどの方法で音合わせをします。

文語(昔の書き言葉)の表現を用いる方法もあります。
「~する」を「~す」としたり、主語を表す助詞を省くことができます。

音合わせの例

・言葉を言い換える

(例)
緊張(4音)→緊張す(5音)
プレッシャー(5音)
くやし涙(6音)→くやし泣き(5音)・くやしくて泣く(7音)
しょっぱい(4音)→塩からい(5音)など

・二つの言葉を組み合わせて複合語を作る

(例)濡れて光る(6音)→濡れ光る(5音)など

・文語の表現を用いる

(例)
緊張する(6音)→緊張す(5音)
力が湧き出る(8音)→力湧き出る(7音)など

③5・7・5・7・7に言葉を組み合わせる

さらに選んだ言葉を組み合わせて、5・7・5・7・7の形にします。
一つの題材で、いろいろな組み合わせを試します。

(例)
・3年の 最後の試合 相手から マスク越しでも 伝わる気迫

・後輩の 応援聞こえ プレッシャー 平常心が どこかへ消えた

    
・コロナ禍で 声援なしの 試合でも 拍手が届き 力湧き出る

    
・くやし泣き 汗にまじった 涙には  努力と苦労 たくさんつまる

 ④推敲する

表現や言葉を入れ替えるなどの推敲をして、自分の思いが伝わる表現に仕上げましょう。
その際には「短歌の作り方のコツ」で紹介した
「感情を表す言葉に頼らない」
「話し言葉を使う」
「オノマトペを使う」

を試してみましょう。

(例)
・(推敲前)3年の 最後の試合 相手から マスク越しでも 伝わる気迫 
→語順を入れ替えて、伝えたいことをよりはっきりさせる。

(推敲後)マスク越し 伝わる気迫 相手にも 背負う何かが あるのだきっと


・(推敲前)後輩の 応援聞こえ プレッシャー 平常心が どこかへ消えた 
→カタカナ語「プレッシャー」を漢字「緊張す」に変えて、緊迫感を出す。

(推敲後)後輩の 応援聞こえ 緊張す 平常心が どこかへ消えた


・(推敲前)コロナ禍で 声援なしの 試合でも 拍手が届き 力湧き出る 
→「拍手が届き 力湧き出る」を話し言葉を使って別の表現にする。
 
(推敲後)コロナ禍で 声援なしの 試合でも 「がんば!」が届く 拍手にのって


・(推敲前)くやし泣き 汗にまじった 涙には  努力と苦労が たくさんつまって 
→「努力と苦労が たくさんつまって」をオノマトペを使って別の表現にする。
 
(推敲後)くやし泣き 汗にまじった 涙には  3年間が ぎゅっとつまって

中学生が作った短歌の例【部活、春夏秋冬、恋など】

最後に、中学生が作った短歌を紹介します。

他の人が作った短歌を鑑賞することで、自分の作る短歌も上達します。
参考になる表現がたくさんあるからです。

短歌を鑑賞するときは、「なんとなくいい」ではなく、「なぜいいと思ったのか」を言葉で説明するようにすると表現の工夫が見えてきます。

以下に挙げる短歌には「短歌の作り方のコツ」で紹介した方法が使われている歌もあり、参考になります。

部活の短歌

・響きわたる 遠くの人の せきばらい 試合開始の 笛の音を待つ
(全日本学生・ジュニア短歌大会入賞作品、加藤伶奈さん、中2)

・先輩の 素振りの音と 違う音 まだまだ遠い 先輩の音
(全日本学生・ジュニア短歌大会入賞作品、伊藤愛衣さん、中1)

・体育館 二つに分ける スマッシュの 羽よもってけ 私の迷い
(小・中学生短歌コンテスト入賞作品、長谷川理緒さん、中2)

・シュートして シュパッと決まり あみゆれる オレンジ色の 青春がある
(小・中学生短歌コンテスト入賞作品、廣田あいらさん 、中2)

春夏秋冬の短歌

・建て物の 隙間に咲いた ふきのとう 光を浴びて きらきら輝く
(小・中学生短歌コンテスト入賞作品、幡本果歩さん、中3)

・雨上がり 空に架かった 虹の橋 窓辺で笑う てるてる坊主
(小・中学生短歌コンテスト入賞作品、平有璃香さん、中2)

・何日も 洗っていない パレットの 如くに固く 美しき我が夏
(全日本学生・ジュニア短歌大会入賞作品、東野礼豊さん、中1)

恋の短歌

・教えてよ あなたの心の 解き方を 数学よりも むずかしい君
(全日本学生・ジュニア短歌大会入賞作品、曹由真さん、中2)

・返信の Re:の数に 比例して 君への想い 増える気がして
(小・中学生短歌コンテスト入賞作品、宮坂菜月さん、中2)

・「スキな人 ダレ?」と聴かれて こたえない 鈍感すぎる そこもスキだよ
(小・中学生短歌コンテスト入賞作品、沖田光麦さん、中2)

短歌の作り方 まとめ

・短歌の作り方のポイントは、
「5・7・5・7・7のリズムを守ること」
「読み手(自分と同じ経験をしていない人)を意識すること」です。

・短歌の作り方のコツは、
「感情を表す言葉に頼らない」
「話し言葉を使う」
「オノマトペを使う」です。

今回ご紹介した短歌の作り方を実践するだけで、楽しく短歌が作れるようになります。

ぜひここで紹介した短歌の作り方を実践し、中学校生活で感じるさまざまな思いを短歌にしてみてください。

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